第22回 (2009/9/25)
京極夏彦特集じゃ
「痛ェと感じるうちは大丈夫だ。躰が生きたがっている証拠よ」
『塗仏の宴 宴の支度』 京極夏彦
講談社ノベルス … P407
 これを読んだ時、あぁ、そうだよなと思いました。
 痛いと感じるということは、体の変調を教えてくれるシグナルなのだと。痛みがなければ、怪我とか病気にも気付かないかもしれないですし。
 精神的にきついときも、ふと、この言葉を思い出すことがあります。
 そういうつらさも、体が生きたがっている証拠なのかなぁ……。
東風 17歳 女性 長野県

コメント爺爺のコメント  ワシぐらいの年じゃあ、危険信号のシグナルが鳴りっぱなしじゃが、もっと長生きしなさいって事?
 東風さん、体が生きたがっている証拠だけじゃなく、心が生きたがってるんじゃあ……。
 爺はなぜか納得したぞえ。

「おっさんに誘われたら熊でも身ィ投げるわい」
『前巷説百物語』 京極夏彦
角川書店/単行本 … P167
 思わず想像してしまいました。
 顔を隠して泣きながら走り去る可哀相な熊の姿を。
 巨漢で異相、長耳の仲蔵の冗談に、すかさず切り返す林蔵の悪口はさすが関西のノリです。
 それにしても哀れな熊……。
小波 42歳 女性 神奈川県

コメント爺 爺のコメント 小波さんの投稿を読んで、黄色くて赤いおべべ着て泣きながら走り去るくまを想像してしまったわい。

「惚れたとか腫れたとか、浮ついてるンじゃねぇよ林蔵。惚れられて、ああそうですかとくっ付いてそれであの女ァ如何なるよ。惚れてりゃ何でもいいのかよ。お前は」
 お前はおちかを倖せに出来ンのか——。
『前巷説百物語』 京極夏彦
角川書店/単行本 … P592
 又市……超(×100)かっこいい! と思ったセリフです。
 恋愛結婚が主流になっている昨今、なんだか頭にガツンと衝撃を与えられ、根本的、かつ大切な事に気づかせてくれたセリフでもあります。
 好きなだけではダメですよね。相手の事を考え、自分とパートナーとの将来を考え、責任を果たせる自分になってからこその「結婚」だということを、又市のこのセリフから教えられました。
 あと、又市の様な「いい男」が見つかるといいなと思いました。(笑)
IYO 23歳 女性 アメリカ

コメント爺 爺のコメント IYOさんのおっしゃるとおりですわい。昨今、芸能界での離婚報道、このあいだ結婚したのに、もう離婚。まったく安直にくっつくからおきるんじゃ。
 ただ、あんまり考えすぎて婚期を逃すのもつらいぞう。へへへ。

「愉しかったでしょう。娯しかった筈ですよ。こんなに長い間楽しませてあげたんですからねえ。それとも」
 男は眼に力を籠めた。
「——死んだほうが楽でしたか」
『塗仏の宴 宴の始末』 京極夏彦
講談社文庫 … P1032
 怖いです。堂島さんの怖さが出ています。
 京極堂シリーズで一番怖いと思ったセリフです。
 京極堂シリーズはいろいろな人がいたけど、堂島さんが一番恐いと思います……。
 最後に死んだほうが楽でしたかというのが、恐さをアップさせてます。
なっさん 15歳 男性 愛知県

コメント爺 爺のコメント 死んだほうが楽、という場面には遭遇したことはないのじゃが、ほんとに背筋の凍るセリフじゃ。爺にとってはゴキブリを素手で触れといわれたようなもんじゃ。

「長く生きておるとな、好いことも、悪いこともある。頭の中にな、その好いことと悪いことが折り重なって溜まっておる。その中の——好いことだけを見ておれば幸せだし、悪いことだけ見ておれば地獄だ。それを選ぶのは誰でもない、己だ」
『続巷説百物語』 京極夏彦
角川文庫 … P737
 地獄だ地獄だ、と分かっていても、それでも悪いことだけ見てしまう癖が私にはあるようです。
 だから、この台詞がとても心に残っています。
 色々なものに翻弄されながらなんとか生き抜いてきた樫村さん。
 小説文中で語られているよりずっと多くのことが彼の人生にはあったのだろうと、なんだか居たたまれない気持ちになってしまうのです。
将軍 21歳 男性 北海道

コメント爺 爺のコメント 悪いことって見ようとせんでも見えてしまうんじゃよなぁ〜。爺はもう死に物狂いで好いことを見るようにしとるぞ。長生きのひ・け・つ。
 ただし、死に物狂いじゃけどな。

「最後は涼子さんだったんだ。そして君に感謝の言葉をいったのだ」
『姑獲鳥の夏』 京極夏彦
講談社文庫 … P614
『姑獲鳥の夏』は何度も読んでいますが、それでもこの箇所に来ると、京極堂の関口くんへの優しさが感じられて涙が出ます。
 京極堂、関口くん、榎木津、木場修それぞれが周りの人への愛情をストレートに出す性格ではないので、こんな感じにほろっと出てくる愛情表現に凄く弱いです。
きよ 33歳 女性 神奈川県

コメント爺 爺のコメント こんな優しい言葉、かけられてみたいものじゃ。ひと言で救われるということも、きっとあるのじゃろう。皆もそういう親友がいるといいのじゃが。

「あなたが——蜘蛛だったのですね」
『絡新婦の理』 京極夏彦
講談社ノベルス … P8
 読んだ瞬間からシビれました。舞い散る桜のしたでの、美しい絡新婦と、黒衣の男。
 …想像しただけで…う…美しい…。
 早く先が読みたかったのですが、余りのビジュアルの美しさに、つい、何度も読み返してしまいました。
 お陰で。
 桜の時期になると、ついふらふらと彷徨い歩きたくなります。そして、満開の桜の下、黒衣の男と美女を幻視してしまう、街で評判の『怪しいおばさん』になる日も、そう遠くはないでしょう…。。
もす〔*’Θ’〕 43歳 女性 福井県

コメント爺 爺のコメント  仮面ライダーに出てきた蜘蛛男を想像してしまうのは、ワシだけじゃろうか。桜の時期じゃなくても、ふらふら彷徨い歩きまわっているワシもきっと『怪しいじいさん』と呼ばれていることじゃろう。

「世界と個人を分かつ境界は運動——経験です。弛みなき経験を重ねることだけが境界を明瞭にする」
『絡新婦の理』 京極夏彦
講談社文庫 … P1095
 なるほどと思わせるこの言葉。経験を重ねた人だけが、絶対揺るがない自分自身と信念を得るのだろう。
 私も修行せねばと考えました。
hiroyasu 22歳 男性 埼玉県

コメント爺 爺のコメント 「揺るがぬ信念」…憧れるなぁ。

「真っ直ぐ真ん中歩くのは——中中大変だよ」
『前巷説百物語』 京極夏彦
角川書店/単行本 … P315
 その通りだと思います。
 人は少しずつ曲がっていく自分を修正しながら、真っ直ぐに歩こうと努力してる者なのかな、と想像してしまう一節です。
 感慨深い台詞で、最も心に刻み付けられました。
ares 18歳 男性 奈良県

コメント爺 爺のコメント 思い返してみれば、ワシも寄り道ばかりしておったかもしれないのう。真っ直ぐ歩くのは本当に難しい。
 ただ、ウチの婆さんに対してだけはいつも真っ直ぐじゃぞ!(ということにしておこう)

「世に不思議なし、世凡て不思議なりですよ」
 百介は自分に言い聞かせるようにそう言った。
 小夜は矢張り、笑って聞き流したようだった。
『後巷説百物語』 京極夏彦
C★ノベルス … P333
 京極先生の「百物語シリーズ」は、もうこの一言に尽きますね。
 最初は訳もわからず、又市らの「仕組み」に組み込まれた百介さんでしたけど、この「後巷説百物語」では百介こと一白翁と次世代の若者たちとの掛け合いで進んでいくのですが、なんとなく「侘しさ・寂しさ」に包まれてる気がします。
 何十年と時間を経過してからこそ、百介が言うからこそ、この一言が生きるような気がします。
ぁき 30歳 女性 東京都

コメント爺 爺のコメント まったくもって、ぁきさんのコメントの通りじゃ。爺の出る幕なし!

このウィンドウを閉じる